3年ぶりに国内市場で復活したトヨタのクロスオーバーSUV「RAV4」には、世界初の「ダイナミックトルクベクタリングAWD」をはじめ3種類の4WDシステムが設定されているほか、一部グレードで2WD車を選ぶことも可能です。
これだけ多彩な駆動システムが用意されている車種は、世界的にも稀といえるでしょう。
ここでは、各方式の雪道での走行性能がどの程度の水準にあるのか、売れ筋グレードの実燃費をどのくらいなのかを徹底的に評価します!
RAV4の4WDグレードの価格は?
売れ筋グレードにおける2WD車と4WD車の価格差は?
4WDと2WDが選べるのは、ハイブリッド車のエントリーグレード「ハイブリッド X」とガソリン車のエントリーグレード「X」の2タイプです。
より人気の高いハイブリッド Xの4WDと2WDの価格差は、24万8,400円とかなり大きくなっています。
後輪駆動用に高出力のモーターを搭載していることを考えると、決して4WD車が不当に割高な価格設定になっているわけではありません。
4WD車と2WD車との仕様の違いは?
ボディスペック
スペック | RAV4 2WD | RAV4 4WD |
---|---|---|
全高(mm) | 1,685 | 1,685 |
最低地上高(mm) | 190-195 | 190-195 |
車両重量(kg) | 1,500-1,620 | 1,570-1,670 |
ボディサイズは最低地上高も含め共通で、車両重量のみ4WD車の方が50~70kg重くなっています。
パワートレイン
ハイブリッドX・4WD車の場合、後輪駆動用に最高出力54psのモーターが備わるのが2WD車との大きな違いです。
Xの場合は、4WD車も2WD車もパワートレインは全く同一になります。
装備
ハイブリッド Xの場合、4WD車のみにスタックからの脱出に効果的なトレイルモードが備わります。
Xの場合は、4WD車のみに雪道での走行に適したスノーモードが備わるのが相違点です。
ライバル車との価格差は?
RAV4の最大のライバルは?
RAV4の最大のライバル車といえば、初代の頃からライバル関係にあった「ホンダ・CR-V」です。
RAV4・ハイブリットX 4WDと競合するCR-Vのグレードは、同じくハイブリッド車の廉価グレード「ハイブリッド EX 4WD」になるでしょう。
価格はRAV4・ハイブリッドX 4WDが345万600円(※北海道地区は347万40円)であるのに対し、CR-V・ハイブリッド EX 4WDは400万320円と55万円ほど高価です。
仕様・装備の違いは?
パワートレインは、RAV4が2.5Lエンジン+モーター及び後輪用モーターで構成されるのに対し、CR-Vは2Lエンジン+モーターというシンプルな構成です。
システム最高出力はRAV4が222ps、CR-Vが215psと拮抗しています。
しかし、4WD走行時はRAV4の場合後輪用モーターの出力がプラスされるので、トータルのパワーでは圧勝です。
安全装備面を比較すると、CR-Vのみ車線変更をアシストする装備やドライバーの注意力低下を検知する装備が付くなど、RAV4に差を付けます。
また、快適装備面でもCR-VはRAV4には標準装備されないカーナビや運転席パワーシート&電動ランバーサポート、運転席&助手席シートヒーターが付くなど、差は圧倒的です。
走りのRAV4、装備のCR-Vといえるでしょう。
RAV4・4WD車の実燃費は?
カタログ燃費との差は?
ハイブリッド X・4WD車のカタログ燃費(WLTCモード)は20.6km/Lですが、実燃費は当サイトの調査によると15km/Lです。
カタログ燃費達成率は72.8%で乖離が大きい方ですが、ハイブリッド車にありがちな傾向といえます。
2WD車との実燃費の差は?
2WD車は売れ筋グレードではないこともあり、当サイトでもまだ実燃費は掴めていません。
カタログ燃費の差は0.8km/Lに過ぎないので、実燃費の差もごく小さいものと思われます。
ライバル車との実燃費の差は?
CR-Vハイブリッド EX 4WDの実燃費は当サイトの調査では15.3km/Lなので、RAV4 4WDとほぼ同等です。
カタログ燃費もCR-Vが0.6km/L勝る程度と大差ないので、妥当な結果といえるでしょう。
RAV4・4WD車の雪道の走行性能は?
RAV4の4WDはどんなシステムか?
RAV4の4WDシステムは最初に説明したように3種類があるので、それぞれの特徴について解説します。
ダイナミックトルクコントロール4WD (G、X・4WD車に搭載)
各種センターからの信号や車両安定化制御システム「VSC」からの信号を4WDコンピューターに取り込み、電子制御カップリングの伝達トルクを制御する方式です。
前後輪のトルク配分は、路面状況や走行状況に応じ100:0~50:50の範囲で自動かつ連続的に変化します。
ダイナミックトルクベクタリングAWD (アドベンチャー、G Zパッケージに搭載)
ダイナミックトルクコントロール4WDの進化版で、前後のトルク配分に加え、後輪の左右のトルク配分を100:0~0:100まで連続可変させる方式です。
ダイナミックトルクコントロール4WDと比較すると、滑りやすい路面での旋回性や安定性が向上しています。
また、4WD走行が不要と判断すると後輪へのトルク配分をドグクラッチで切り離し、駆動ロスの少ない2WDで走行する「ディスコネクト機構」が備わることも特徴です。
E-Four (ハイブリッドG、ハイブリッド X・4WD車に搭載)
前輪の空転傾向を検知すると、後輪用モーターを起動させる電気式4WDシステムです。
前後輪のトルク配分は、プリウスが100:0~40:60までの連続可変であったのに対し、RAV4のシステムは100:0~20:80と後輪への動力配分が大きくなっているのが特徴です。
更に後輪用モーターの出力増強と相まって、様々な路面への対応力が向上しています。
RAV4の雪道での実際の走行性能は?
ダイナミックトルクコントロール4WD 搭載のG及びXの雪道走行性能
大抵の状況で、概ね不満の無い走行性能を示します。
発進時の挙動はX・2WD車と比べ明らかに安定性が高く、ホイールスピンや蛇行などはせずスムーズな発進が可能です。
エンジンはそれほどパワフルとは言えないものの、その分滑りやすい雪面でも安心してアクセルを踏める良さがあります。
コーナリングはアンダーステアが出て旋回の軌跡が拡大するものの、安定性は高く決して破綻することはありません。
また、このシステムを搭載するGとXはバネ下荷重の軽い17インチタイヤを履くため足元がバタつかず、優れた乗り心地を実現しているのはメリットです。
ダイナミックトルクベクタリングAWD 搭載のアドベンチャー及びG Zパッケージの雪道走行性能
ダイナミックトルクコントロール4WD搭載車と比べ、ワンランク上の安定性・旋回性を発揮します。
左右の轍でミューが異なるような状況でも安定した走行ができるのは、左右後輪のトルク配分を独立制御している効果でしょう。
コーナリング時のアンダーステアはダイナミックトルクコントロール4WD車よりも明らかに少なく、ほぼニュートラルな特性を示します。
車の方で積極的にグイグイ曲がっていくような感覚は、他の4WD車では得難い特徴です。
また、このシステムを搭載するアドベンチャーとG Zパッケージはワイドなタイヤを履くため、雪上でのグリップが優れているのも長所といえます。
RAV4のダイナミックトルクベクタリングAWD搭載車は、雪上での運転が楽しくなる貴重な1台です。
E-Four 搭載のハイブリッドG及びハイブリッド Xの雪道走行性能
これまで紹介した2種類のガソリン4WD車とは、全く異なる走行フィーリングを持っています。
後輪駆動用モーターのトルクが強力で、かつモーターならではの瞬発力があるため加速は爽快です。
コーナリングは基本的にはアンダーステアながら、アクセル操作で姿勢をコントロールできるので、ダイナミックトルクベクタリングAWD搭載車に劣らない楽しさがあります。
また、発進のスムーズさでは、左右の轍のミューが同じならばこのシステムが一番かもしれません。
RAV4・4WDのまとめ
RAV4・4WD車の雪道での走行性能は、4WDシステムの種類により異なる特性を持っています。
ダイナミックトルクコントロール4WD 搭載車は、基本的に「C-HR」などと同じシステムなので特に傑出した特性を示すわけではありません。
しかし、走行性能に特に問題がある訳ではなく、4WD車の平均レベルはクリアしています。
一方、世界初のシステムとなるダイナミックトルクベクタリングAWD 搭載車は、あらゆる路面状況をクリアする安定性や優れた旋回性など、これまでの4WD車とは次元を異にする印象です。
雪上で運転の楽しさが味わえることも加味すると、RAV4のガソリン車を購入するならこちらが本命でしょう。
そしてE-Four搭載車(ハイブリッド)ですが、従来のシステムと比べトルク配分の改善やモーターの出力強化が行われているため、こちらもハイレベルな走行性能を実現しています。
洗練性ではダイナミックトルクベクタリングAWD搭載車には一歩を譲るものの、パワフルさを生かしたダイナミックな走りは得難いメリットです。
最後に、RAV4の4WD車全般にいえることですが、最低地上高が190~200mmと十分確保されているため、深雪でもスタックしにくいのが特徴になっています。
RAV4は、豪雪地帯での足替わりに好適な1台といえるでしょう。
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